宮本輝 流転の海 第9部 「野の春」

「野の春」読み終わりました。ちょっとボーとしてしまいました。表紙の絵がすべてを物語っていて秀逸です。紙の本ならではですね。良い小説でした。一人息子がいる自分には、父と子の物語は胸にしみます。改めて説明の必要もないシリーズです。第1部から読み直したいと思います。
しかし、1260人もの登場人物がいるとか。無名の人と人との織りなすドラマに惹かれます。「あたりまえでふつうの人間のやさしさと哀しみにみちた生き死にを、民族や国家と向き合いながら、記録を中心とする方法によって明らかにしたい」1979年に創刊された『季刊人間雑誌』創刊号の巻頭の言葉です。世の中に名を遺す人は極極一部。でもふつうの人々も必死に生きて、死んでゆきます。そして、それぞれのドラマがあります。そんなことを考えさせられました。

自分の父も、ごく当たり前の人。59歳で早死にしてしまいましたが、大工から、出入りしていた会社の営繕係になり、貧しいながらも3人の子供を無事成人させました。無口な父で、ほとんど話をしたことがありません。正月休みに007の映画などに連れて行ってくれましたが、ほとんど会話をした記憶はありません。今、自分の息子と酒を飲みながらの会話が楽しみな日々を送るとき、もっと会話しておけばよかったとの後悔もありますね。

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